支払の調整

厚生年金保険において、保険給付の公平という観点からさまざまな支払の調整が行われます。一人一年金という原則から厚生年金保険内においても、他の年金制度との間でも保険給付の調整があります。

内払処理

次の場合、その支払われた乙年金は、甲年金の内払とみなします。

  • 乙年金の受給権者が甲年金の受給権を取得したため乙年金の受給権が消滅した場合において、乙年金の受給権が消滅した月以後の分として、乙年金の支払が行われたとき
  • 同一人に対して乙年金の支給を停止して甲年金を支給すべき場合において、乙年金の支給を停止すべき事由が生じた月の翌月以後の分として、乙年金の支払が行われたとき

次の場合、その支払われた年金または減額すべきであった部分は、その後に支払うべき年金の内払とみなすことができます。

  • 年金の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき期間の分として年金が支払われたとき
  • 年金を減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、その事由が生じた月の翌月以後の分として減額しない額の年金が支払われたとき

同一人に対して国民年金法による年金たる給付の支給を停止して年金たる保険給付を支給すべき場合において、年金たる保険給付を支給すべき事由が生じた月の翌月以後の分として国民年金法による年金たる給付の支払が行われたときは、その支払われた国民年金法による年金たる給付は、年金たる保険給付の内払とみなすことができます。

充当処理

年金たる保険給付の受給権者が死亡したためその受給権が消滅したにもかかわらず、その死亡の日の属する月の翌月以後の分として当該年金たる保険給付の過誤払が行われた場合において、当該過誤払による返還金に係る債権(以下「返還金債権」といいます。)に係る債務の弁済をすべき者に支払うべき年金たる保険給付があるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該年金たる保険給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金額に充当することができます。

併給調整

厚生年金保険も原則として同時に2以上の年金が支給されることはありません。同時に2以上の受給権を取得したときは、そのうちの1つを受給権者が選択しなければなりません。そして、他の年金は支給停止となります。(その時点では受給権は消滅しません。)

年金給付は、受給権者が他の年金給付、国民年金法による年金給付または他の被用者年金各法による年金給付を受けることができるときは、その間、支給を停止します。具体的には次のような組み合わせなどが併給調整の対象となります。

  • 老齢厚生年金と障害厚生年金・・・他の年金給付
  • 障害厚生年金と遺族厚生年金・・・他の年金給付
  • 障害厚生年金と遺族基礎年金・・・国民年金法による年金給付
  • 遺族厚生年金と障害共済年金・・・被用者年金各法法による年金給付
併給調整例外

しかし、次に挙げる場合には例外的に併給が行われます。

  1. 厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される国民年金法による年金給付
  2. 厚生年金の老齢厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される共済組合の退職共済年金
  3. 厚生年金の遺族厚生年金と国民年金の老齢基礎年金および付加年金(受給権者が65歳以上に限る)
  4. 厚生年金の老齢厚生年金または遺族厚生年金(いずれも受給権者が65歳以上に限る)と国民年金の障害基礎年金
  5. 老齢厚生年金(受給権者が65歳以上に限る)の額の2分の1と配偶者に対する遺族厚生年金または他の被用者年金各法による遺族共済年金の額の3分の2
    ※たとえば、夫が亡くなり遺族厚生年金を受給していた妻が、65歳になり自分の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給できることとなった場合
    あるいは、夫が亡くなり遺族共済年金を受給していた妻が、65歳になり自分の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給できることとなった場合
  6. 他の共済年金各法による退職共済年金(受給権者が65歳以上に限る)の額の2分の1と配偶者に対する遺族厚生年金の額の3分の2
    ※たとえば、夫が亡くなり遺族厚生年金を受給していた妻が、65歳になり自分の老齢基礎年金と退職共済年金を受給できることとなった場合

上記の併給組み合わせは、将来に向かって(つまり、過去に遡ってはできない)選択する年金給付の組み替えができます。年金額で損をしないためには、最初の選択を誤らないことが一番ですが、良い条件の年金給付を組み合わせられることがわかった時点で、選択替えをしましょう。

旧法、新法間併給調整の原則と例外

原則として、旧法の年金給付を受けていた人が新法の受給権を取得した場合でも、新法の年金給付を受けていた人が旧法の受給権を取得した場合でも、その人が選択する年金給付が行われ、他の年金給付は支給停止されます。ところが、次の場合には旧法と新法の併給ができます。

旧法新法の併給調整例外
  1. 新法の老齢基礎年金(受給権者が65歳以上に限る)と、旧法の厚生年金(船員保険含む)の遺族年金および通算遺族年金
  2. 新法の老齢厚生年金と旧法の国民年金の障害年金(受給権者が65歳以上に限る)
  3. 旧法の国民年金の老齢年金若しくは通算老齢年金または障害年金(受給権者が65歳以上に限る)と新法の被用者年金の遺族給付(遺族厚生年金、特例遺族年金、遺族共済年金)
  4. 旧法の厚生年金の老齢年金、通算老齢年金および特例老齢年金(受給権者が65歳以上に限る)の額の2分の1と新法の遺族厚生年金
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