給付基礎日額
労働者災害補償保険の保険給付(金額)において基礎となるのが給付基礎日額です。原則的に、給付基礎日額は労働基準法第12条「平均賃金」
の算出方法と同じです。この場合、労働基準法第12条第1項の平均賃金を算定すべき事由の発生した日は、負傷若しくは死亡の原因である事故が発生した日または診断により疾病の発生が確定した日となります。
労働基準法第12条「平均賃金」とは?
この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によって計算した金額を下ってはならない。
一 賃金が、労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60
二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
給付基礎日額に1円未満の端数があるときは、これを1円に切り上げます。
年金、一時金に反映される給付基礎日額
障害(補償)年金、障害(補償)一時金ともに支給額の計算には給付基礎日額という金額を使用します。給付基礎日額とは労働基準法第12条の平均賃金に相当する額です。
給付基礎日額は原則として、負傷の原因である事故が発生した日、または診断によって疾病の発生が確定した日(これらの日を算定事由発生日といいます。)の前日からさかのぼって3ヶ月間の賃金総額をその期間の総日数で除した額です。しかし、現実には月給制の事業所が多いですから、算定事由発生日からさかのぼって直近の賃金締切日から3ヶ月間の賃金総額をその期間の総日数で除した金額が給付基礎日額(小数点第3位を四捨五入し第2位まで算出します。)となります。図の例で計算すると、原則では1月15日~4月14日の3ヶ月間は90日、賃金締切日で計算すると12月26日~3月25日の3ヶ月間は同じく90日となります。
障害の程度で給付基礎日額の○○日分という計算で支給額が決まりますが、障害等級が1級~7級までは年金という形でその障害等級が継続する間支給され、8級~14級は一時金の形で一括支給されます。
障害等級 | 支給額 | 障害等級 | 支給額 | ||
---|---|---|---|---|---|
年金 | 1級 | 313日分 | 一時金 | 8級 | 503日分 |
2級 | 277日分 | 9級 | 391日分 | ||
3級 | 245日分 | 10級 | 302日分 | ||
4級 | 213日分 | 11級 | 223日分 | ||
5級 | 184日分 | 12級 | 156日分 | ||
6級 | 156日分 | 13級 | 101日分 | ||
7級 | 131日分 | 14級 | 56日分 |
給付基礎日額のスライド
長期間にわたる入院治療や障害が残って年金が支給される場合など、保険給付が長期間行われるとその間に物価や賃金の変動などがあると、実経済に保険給付の金額がそぐわなくなるときがあります。そこで、実経済に保険給付金額を合わせるために、「スライド改定」という給付基礎日額の改定が行われます。
障害(補償)給付においては、障害(補償)年金、障害(補償)一時金ともスライド改定が行われます。ただし、実際に物価が前年に比べて上がったか下がったかは年度末にしか分かりませんから、改定額が反映されるのは、算定事由発生日の属する年度の翌々年度の8月以降の月からとなります。つまり、傷病のあった年度とその翌年度を比較してスライド改定率を決め、翌々年度の8月から改定された金額を適用するというものです。
詳しくは知っ得!労災保険をご覧ください。